英語シノニムの語法 (1976年)
(P.194)
「・・・でおおわれる」というとき、3つのシノニム表現が考えられるが、in はあとで述べるとして、Wood は「おおわれる」という受身的色彩の濃い場合は by, 「おおわれている」という状態をいう場合は with であると説明している。by は(無生物を含む)動作主(agent)、with は道具(instrument)を表す前置詞を考えて、A is covered by B は B covers A の受身形であり、A is covered with B は A is covered with B by C の by C が省略された表現とみて、C covers A with B の受身形とみなすことができる。
しかし、後者の場合、
The table was covered with the cloth.
では、状態と一時的行為ということは別にして、by her のような動作主を想定することができるが、
The table was covered with snow.
のような例では不可能である。
そこで、A is covered with B のような表現は、一部で説かれているように、むりに、能動形→受動形といった派生を考える必要はなく、それぞれ独立した表現と考えるのが妥当である。「by と with」の項で、「元来『with + 事物』で道具で示したものが擬人化して、人と同じように動作主を表すようになったからだと思われる」としたのはその意味であり、「by のほうが動詞によって程度の差はあるが、多少とも斬新な表現効果を表すものであると考えてよいだろう。」と述べたのは、with の代わりにこの by の使用が近来目立って増えてきたからである。
Wood が先の例として、
The ground was covered with snow.
なる例をあげているが、同じような状況で次の例があった。
the Tanzawa Ranges in Kanagawa prefecture, where the peaks were still covered by snow that had fallen only one week prevously.
(神奈川県の丹沢連峰、その峰々はほんの1週間ばかり前に降ったばかりの雪でおおわれていた。)
- J.Kirkup, Japan Behind the Fan
この例でもって、Wood の説は妥当ではないことは明かであろう。