Pages

Thursday, February 14, 2013

「泣くな、はらちゃん」第2話の感想



あ、長いです。一応、言っときます。




泣くな、はらちゃん  第2回  20130126 投稿者 kate634




さて、本格的に恋愛ドラマが展開されるのはこの第2回からなのですが、まず、冒頭のマンガ世界のやりとりが面白いですね。第1回で高らかに歌い上げられていた「私の世界」ですが、そればかり聴かされて「マンガの世界」の住人たちはやや食傷ぎみ。痺れを切らした笑いおじさん(甲本雅裕)ははらちゃんにこんな問い掛けをします。


笑いおじさん 「だいたいさ、その、そっちの世界に行って得たものって何だ?」
はらちゃん 「え・・・」
笑いおじさん 「神様は相変わらずご機嫌斜めだし。」
はらちゃん 「あ、でも、歌とメロディを・・・」
笑いおじさん 「そんなもんじゃ世界は変わらないんだよ!」


甲本雅裕(ミュージシャン・甲本ヒロトの兄)にこのセリフを言わせるのが凄いw まぁ、笑いおじさんはかまぼこを食べたかっただけのようで、その直後、素直に「かまぼこ食ってみてえ」と泣き笑いをします。それに釣られる格好で、あっくんは「車に乗ってみたい」、マキヒロは「犬を見てみたい」とそれぞれに「外の世界」への憧れを語っていくわけですが、その様子を見ていたユキ姉がこう語りかけます。


ユキ姉 「世界の秩序が乱れちゃったねぇ。でも、それは仕方のないことなんだよ、はらちゃん。違う世界を知るってことはさ、素敵なことだけど、つらいことなんだよ。」


いいセリフです。ユキ姉の過去を暗示させる内容でもあり、同時に、これは恋を言い表したものでもあるのでしょう。恋とはそれまでの自分を超えることであり、ときに、捨てることでもある。恋は「甘い」と形容されることが多いけれども、でも、同時に「つらいこと」でもあります。(ポエムってます


(苦しそうに胸を押さえるはらちゃん)
ユキ姉 「どうした? はらちゃん?」
はらちゃん 「いや・・・、自分でもよくわからないんですけど、なんか、胸のこのあたりがムズムズっていうか、痛いっていうか・・・、なんか変な感じなんですよね。神様、あ、いや、越前さんのことばかり考えてしまうんです。会いたくなっちゃうんですよね。越前さんに会いたくて仕方ないんです。」
ユキ姉 「まさか・・・」


はらちゃんは越前さんのことが好きになってしまったわけですね。ただ、よくよく考えてみると、どのタイミングで好きになったのか、はっきりとはわからないんですよね。第1回の神社における越前さんとのやりとりから「なにか」を感じたのかもしれませんが、まぁ、でも、恋なんてそんなもんです。どこで、何が理由で、その人を好きになったのか、そんなことはいちいち覚えてられません。(ポエムってます


そして、再び「外の世界」へ出るはらちゃん。親切な田中さんが「マンガ」の存在を教えてあげるシーンではらちゃんはこう言います。


はらちゃん 「これがマンガ・・・、なんか、懐かしい感じがしますね。」


「懐かしい」なんて語彙をいつ覚えたんだ、はらちゃん・・・という気がしないでもありませんが、ともあれ、はらちゃんは「マンガの世界」の住人なので何かを感じるわけです。そのあと、はらちゃんは越前さんに会うためにふなまる水産の中へ入っていくのですが、そこでパートリーダーの矢口さんははらちゃんにこう呼びかけます。


矢口さん 「こないだみたいに、神様を怒らせちゃダメだってことよ。どうも、はらちゃん。」


当たり前と言えば当たり前ですが、矢口さんだけは最初からはらちゃんのことを「どこかで見たような気がする」と引っかかりを覚えており、第1回のラストでは本屋さんで矢東薫子全集を手に取って確認までしています。それを踏まえて考えると、ここではっきりと「どうも、はらちゃん」と言っているのは改めて挨拶をしているようなものですかね。それも、自覚的に。また、「神様を怒らせちゃダメだってことよ」と、はらちゃんにも理解できるようにマンガ世界の視点で忠告を与えているのも印象的です。この時点で、矢口さんだけは事の次第をだいぶ理解しているのでしょう。


で、肝心の越前さんですが、こちらはテンションが低いままでして、やる気なさそうにかまぼこ新作募集のポスターを描いています。こんなイラストです。




















紺野さん 「イヤならさ、イヤって断れば良くない? それなのに、いかにも『こんなもんでしょ?』みたいな絵、描いちゃってさ。」


ズキッ! わたしは画力に自信がないのでこのセリフに敏感に反応してしまうのでありますが、ま、それはいいとして、紺野さんはある種のヤンキーキャラとして登場しているのでしょう。もちろん、田中さんのことが好きな紺野さんにとって越前さんは「一方的な恋敵」でもあるので、そういった感情も入ってはいるのでしょうが、このドラマは設定からして文化系寄りなので、そこにカウンターとして置いているが紺野さんなのではないか、と。「アメトーク」におけるホトちゃんみたいなもんですね。「なんでなん?」と言わせることで、共感しづらい視聴者も引き込むのがその役割。


紺野さん 「不愉快です。わたし、あなたみたいな人がいっちばん嫌い。」
越前さん 「えっ?」
紺野さん 「その顔も嫌い。イライラする。」
越前さん 「あの、わたし、何かしましたっけ・・・」
紺野さん 「何もしないのがイライラするんですよ!」
越前さん 「すみません、意味がわからないです・・・」
紺野さん 「世の中のことすべてに、『わたしは関係ないですぅ』みたいな顔してますよね!? 『わたしなんか、そんな』『わたしなんて、全然』『わたしなんて、とんでもない』『わたしなんて』『わたしなんて』『わたしなんて』・・・、そのくせ、実は自意識バリバリ強くて、失敗したりして傷つくのが嫌なだけなんですよね。そういうヤツに限って、自分が大っ好き。」
越前さん 「なんで、そんなにあたしに攻撃的なんですか・・・」
紺野さん 「ちゃんとやってください! やるんなら、ちゃんとやれって言ってるんです! 嫌なら断れ、やるんならどんなことでもちゃんとやってください! かまぼこ新作募集ポスターでも、ちゃんとやってください!」


まー、越前さんみたいなタイプが嫌いな人たちの「声」を代弁しているかのようなセリフ回しになっているわけですが、でも、わたしが好きなのはそのあと。


紺野さん 「わたしもやるから。」
越前さん 「何を?」
紺野さん 「かまばこポスターです。宣戦布告、勝負です。」
越前さん 「えっ・・・?」
紺野さん 「一度ぐらいは本気で勝負しなさいよ。」


このドラマは言いっ放しがないんですよね。はらちゃんも第1回で


はらちゃん 「わたしは心から、あなたにもう少しだけでいいから幸せになってもらいたいと思いました。越前さんが幸せになるためだったら、わたしは何でもします。お願いします! 自分のこと、どうでもいいなんて言わないでください。」


・・・と、ただお願いするのではなく自らも行動すると言っている。紺野さんもまた、ただ文句を言うだけではなく、「勝負」というカタチを取りつつ、越前さんを促している。紺野さん自身もこうやって吹っかけて部屋から立ち去ったあと、ドアの向こう側で「あー、やっちゃった」という表情を見せていますから、これはこれで勇気のいる行動だったわけですね。ま、ただ、越前さんは


越前さん 「何を・・・? ちょっと、紺野さん、その勝負お断りします。しませんよ・・・、わたしはそんな意味のないこと・・・。」


と相変わらずのローテンションなのですがw でも、はらちゃんがそこに入っていきます。はらちゃんは空気を読みませんから「何か気まずい雰囲気だなー、そっとしておこう」とか考えませんw


はらちゃん 「神様、いやっ、越前さん。」
越前さん 「何ですか。」
はらちゃん 「戦い、受けて立つんですよね? 悪魔さんとの。」
越前さん 「はい?」
矢口さん 「神と悪魔の戦いかー。」
越前さん 「戦いなんてしませんよ・・・」
はらちゃん 「それはダメです、越前さん。それはダメですよ。わたしもあのかた、悪魔さんに同意見です。やるんだったら、ちゃんとやりましょうよ。越前さん、あなたは神様だからご存知かもしれませんが、わたしは何度も言ってますよね。『仕事なんだからちゃんとやろうよ』って。『みんなやりたくてやってるわけじゃないんだから、勤務時間だけはちゃんと仕事しようよ』って、何度もわたし、そう言ってるじゃないですか。」
越前さん 「言ってるじゃないですか、って・・・」

























越前さんはパートのおばちゃんたちに対する不満として「ちゃんとやりましょう」とグチっていた。そして、それと同じことを紺野さんから言われたのに、越前さん、あなたはその「戦い」から逃げるのですか? そう、はらちゃんは痛いところを突いているわけですね。ま、はらちゃん本人はあまり深く考えていないんだろうけどw


はらちゃん 「越前さん、ちゃんとしましょうよ。それから、わたしはこうも言っていますよね。『わたしは本気を出してないだけなんだ』って。」
越前さん 「なに言ってるんですか!? もう、いいです! わかりました!」
(越前さん、描きかけのポスターを破いてしまう)
越前さん 「ちゃんとやります。描き直します。それでいいですか。」
はらちゃん 「はい、ありがとうございます。」


ここの『わたしは本気を出してないだけなんだ』というのは本編で紹介されているマンガには出て来ていないセリフですかね。紺野さんの指摘の通り、越前さんは自意識と自己愛がとても強いのでしょう。ま、誰だってそうですけどね。単に、表現方法が違っているだけで。


んで、このあと、はらちゃんの「愛の告白」があるわけですが、そこは見てもらったほうが早いですから書き起こしはしないでおきます。はらちゃんは「恋」という言葉を覚え、そして、交番で矢口さんから自身の恋が「片想い」であると教わります。


はらちゃん 「片想いって、悲しいんですね・・・」
矢口さん 「ふふ、そうとは限らない、美しいんだよ、片想いは。」
はらちゃん 「うつくしい?」
矢口さん 「この世界のほとんどの想いは片想いなんだ。世界は片想いで出来てるんだよ。」
はらちゃん 「はぁ・・、そうなんですね。大事なものなんですね。」
矢口さん 「そうだねっ。」
はらちゃん 「大切にしますっ、片想い。」


この直後、越前さんが自宅に戻ってマンガのノートを開くことではらちゃんは「マンガの世界」へ引き戻されてしまうわけですが、それを目の前で見ていた矢口さんは大きく驚いたりはしません。初めてここで、矢口さん=矢東薫子であると描かれているわけですね。


ともあれ、自分の描いたマンガとそのマンガの中から出てくるはらちゃんに励まされる格好で、越前さんは「ちゃんと」ポスターを描きます。そして、それが一段落したところで、大切にしていた矢東薫子全集が無くなっていることに気づいて、再び出て来たはらちゃんが一緒に探しましょうと促します。


越前さん 「いいの、いいんです。」
はらちゃん 「よくないです!」
越前さん 「好きなんですよね? そのマンガに片想いしてるんですよね? 美しいんです、大切なことなんです、片想いは。教えてください、探しに行きましょう。」


矢口さんに教わったこと、そのまんまなわけですが、素直なほうがいいんです。ひねた男性よりも素直な男性のほうがいいんです。そう思いません?(誰に聞いてるんだ


で、矢東薫子全集を探しに夜の町を行くふたり。走り慣れてないせいか、膝に手をついて息を切らせている越前さんの手を取って、はらちゃんはこう言います。


はらちゃん 「走るのが遅いんですね、越前さんは。小さいし、足短いし。」


素直なんです、悪気はないんですw そして、はまゆう書房で「矢東薫子全集」を見つけたはらちゃんが軽く騒動を起こしつつも、結局は越前さんが自腹で買い戻してこの件は解決します。3万円といえば大金なので、一瞬ためらいを見せる越前さん。でも、再び手にしたとき、嬉しそうに安堵のため息をもらします。


はらちゃん 「今の、なんですか?」
越前さん 「ちょっと、黙ってて。」

















ま、ずっと黙ってたわけですがw いいんです、男性は素直なほうがいいんですw あの暗い子、越前さんもここで初めて笑みを見せます。


















なんでしょう、「クララが立った」的な妙な感動がありますw



















この回のクライマックスは夜の町が美しいです。なんてことのない、地方都市の夜ですけど、でも、美しい。そして、演出も素晴らしい。「私の世界」と「初恋は片思い」は同じメロディーを持つ曲なわけですが、ここでは「初恋は片思い」が流れます。


「初恋は片思い」
こいのうたとか きらいなんだよね どれもみなおなじ
こいのうたとか きらいなんだよね わからない
こいのうたとかうたいたくないよね ほかにもあるでしょ?
こいのうたとかうたいたくないよね にあわない
こいするためにうまれてきたとかありえない そう おもっていた
でもこいをした でもかたおもい あなたのことしかうたえない
でもこいをした でもかたおもい そんなじぶんにわらう


このドラマに出てくる「片想い」は


はらちゃん → 越前さん
田中さん → 越前さん
紺野さん → 田中さん
玉田工場長 → 矢口さん


と、いくつかあるわけですが、この曲に合わせて、はらちゃん、田中さん、紺野さんの「片想い」が描かれていきます。矢口さんは「片想いってのは美しいものなんだよ」とはらちゃんに教えていましたが、それは片想いがいずれは終わるからですかね。終わりがないとしたら、それはもはや「片想い」ではなく、執着ですし。この夜の町のシーンで、田中さんの「片想い」はなかば終わりを迎えるのでしょうし、紺野さんの「片想い」も「想い」だけではなく行動へと変化していく。すべてがハッピーエンドとなるわけじゃないけど、でも、終わるから「次」に進める。(ポエムってます


で、主人公のふたり。はらちゃんは「離れることのつらさ」をストレートに言葉にします。


はらちゃん 「越前さん、片想いって涙が出るものなんですね。わたしは、あなたと離れることが苦しくてつらいです。だって、次、いつ会えるか、わからないじゃないですか。わたしは、恋してる人に自分から会いに行くこともできない。越前さん、胸が苦しいです。痛いです。どうか、行かないでください。」


越前さんは「何なの、それ!」と言いながら小走りで去って行ってしまうのですが、でも、立ち止まって、そして、はらちゃんのところへ戻ろうとします。



















越前さんが初めて自分からはらちゃんのほうへ近づいていく。「片想い」が「片想い」ではなくなる瞬間。だからこそ、このシーンはスローモーションで描かれているのでしょう。


んで、まぁ、この夜の町をシーンを見て、「これはいいドラマだわ」と思ったわけですが、こういうふうにシンプルに恋を描くには何らかのギミックが必要になるのでしょうね。現実的なドラマだったら、あそこまでストレートなセリフは出てこないし、出すわけにもいかない。でも、はらちゃんは自分にわかってることだけを口にするし、見ている側もそれを了解しているので、そのままの気持ちを描くことが出来る。「マンガの世界」の住人という不思議な設定ではあるけども、そのおかげで恋愛ドラマとしての純度は極めて高いものになっているのかなー、と。


「わたしは、あなたと離れることが苦しくてつらいです。だって、次、いつ会えるか、わからないじゃないですか。」


なんてことないセリフですが、でも、これこそが恋だよなー、と。





















そして、最後にモノクロの世界だったマンガに初めて赤いハートマークが加えられる。それを見つけた矢口さんは越前さんがはらちゃんを描いていることを知る、と。脚本、よく出来てますね。


まぁ、なんていうのかなー、恋愛ってこんなものですよね。見た目でもない、話術でもない、結局は相手を思ったうえで行動すること。はらちゃんが矢東薫子全集を探しに、一緒に夜の町を走ってくれた。そして、越前さんの大切なものを取り返そうと懸命に行動してくれた。そのほうがよっぽど相手の心に訴えかけるチカラがあるんです。言葉だけが愛を語るわけじゃないってことですね。(ポエムってます




(つづく)