ユキ姉と玉田工場長。この二人はわたしにとってのお気に入りです。そして、第5回で大きく物語が動いたので、ちょっとだけ書きたいことを書いておきます。このドラマはもう展開を読めないので、これは予想ではなくて、願望みたいなものです。
【ユキ姉】
物語のカギを握るユキ姉。マンガ世界の5人のなかで唯一、外の世界に出たことがありました。
(第1話)
ユキ姉 「黙ってたけど、わたしは行ったことがあるんだよ。その昔ね。もうひとつの世界に。」
はらちゃん 「もうひとつの世界? なんですか、それ?」
ユキ姉 「神々の国だ。神様が住んでるんだ、あそこには。」
なので、ユキ姉は最初からメロディーの存在もギターの弦の数も知っていました。
(第1話)
ユキ姉 「はらちゃん!」
はらちゃん 「はい?」
ユキ姉 「一生懸命歌ってるつもりのあなたには悪いけどさぁ、それは・・・歌じゃないよ。」
はらちゃん 「え?」
ユキ姉 「歌にはね、メロディーってものがあるんだ。」
ユキ姉 「それにね、ギターの弦は本当は6本だ。」
はらちゃん 「・・・なに言ってるんですか、ユキ姉。ギターの弦は3本。3本ですよ。」
ユキ姉 「6本だ。」
はらちゃん 「え、それって、わたしたちの世界をつくってる、あの、神様ですか? え、そこにユキ姉が行ったってことですか?」
ユキ姉 「そういうことだね。その世界はギターの弦は6本なんだよ。」
歌とギターは元の作者である矢東薫子にとって何か重要な意味を持っていそうな気がするのですが、そこはいまのところわかりません。また、第1話の時点でギターの弦が3本だったのも、矢東薫子の時代からそうだったのか、越前さんがそう描いていたからなのか、そこもわかりません。
(第1話)
ユキ姉 「最近、この世界がなんだか暗く重たいのは、おそらく、われわれの神様の機嫌が悪いからだ。」
ともあれ、ユキ姉はマンガの世界が暗く重たい原因が外の世界にあると知っているわけです。ただ、わたしが気になるのは、ユキ姉以外の4人の反応。
(第1話)
笑いおじさん 「なーにを言ってんだぁ? 別の世界なんてあるわけないだろぉ? 世界ってのいうのはな、オレたちが生きてるここのことなんだよ、何だよ、別の世界って?」
ユキ姉 「あるんだよ。」
笑いおじさん 「どこにあるんだよ。言ってみろ。」
ユキ姉 「ここではない、別のところに。」
はらちゃん 「ど、どんなところなんですか、そのもう一つの世界っていうのは?」
ユキ姉 「教えるのはやめとくよ。知ると、今、自分がいる世界が余計イヤになるから。」
ユキ姉以外の4人はユキ姉が外の世界に出たことも知らないし、外の世界の存在そのものも知らないのです。ですが、これはよくよく考えてみると不思議です。なぜなら、もし、あの狭い居酒屋のマンガ世界にずっと一緒にいたのであれば、ユキ姉が外の世界に出たことだって知ってるはずです。では、なぜ、ユキ姉以外の4人は何も知らないのか。
越前さんが愛読していたのは「矢東薫子漫画全集」。単一の作品ではなくて「全集」なんですよね。なので、複数の作品が収録されている可能性が高い。つまり、ユキ姉が外の世界に出たことを他の4人が知らないのは、少なくとも、ユキ姉と他の4人は別々の作品のキャラクターだったからじゃないのか。そして、越前さんは別個の作品に出てくるお気に入りのキャラクターを集めて、この居酒屋の舞台で二次創作しているのではないか。
(第3話)
矢口さん 「矢東薫子。」
越前さん 「えっ!?」
矢口さん 「・・・のマネだよね。ていうか、出てくるキャラは全部パクり!」
越前さん 「知ってるんですか、矢東薫子先生の漫画。」
矢口さん 「うん、むかし、読んだことがある。」
越前さん 「ほんとですか!? 嬉しいです! 」
第3話でもうひとりの重要人物である矢口さんは越前さんのマンガを指して「出てくるキャラは全部パクり」と言っています。ただ、作品そのものをパクりとまでは言ってません。なので、あの5人のキャラクターの組み合わせと居酒屋の舞台というのは越前さんが組み合わせたもので、矢東薫子の原作ではああなっていなかったのではないか。
(第5話)
矢口さん 「ハッピーエンドにはならないかもしれないけどさぁ、でも、彼の気持ちにはちゃんと応えてあげるべきなんじゃない。だって、あなたが作ったんでしょ、彼を。神様なんでしょ、あなた。世界を創った神様にも責任はあるんじゃないかなぁ。」
第5話でも、矢口さんはらちゃんのことを指して「あなた(=越前さん)が作ったんでしょ、彼を」と言っています。もちろん、オリジナルのキャラを作り上げたのは矢東薫子ですが、今のマンガ世界をつくったのは越前さんということになるのかもしれません。
(第1話)
笑いおじさん 「その、もうひとつの世界で、神様のご機嫌がよくなれば、オレたちのこの世界も明るくなるってことか、ん?」
ユキ姉 「そうだね。」
第1話の冒頭ではらちゃんの質問にこう答えていたユキ姉。でも、実際にはらちゃんが神様(=越前さん)に会ってマンガの世界に戻ってきたとき、マキヒロや笑いおじさんがはしゃぐなか、ユキ姉だけは何とも言えない表情を浮かべています。
(第1話)
はらちゃん 「わたしはねぇ、神様に自分の気持ちをぶつけました。どうか幸せになってください。そうでないとわたしたちの世界は曇ったままなんです。どうか世界を明るくしてください、と。」
ユキ姉 「そう・・・言ったの?」
神様と接点を持つことを素直には喜べないユキ姉。でも、第1回の終わりにマンガ世界でギターの弦が6本になり、はらちゃんが初めて「私の世界」を歌うとき、にこりと微笑んでもいます。
(第2話)
ユキ姉 「世界の秩序が乱れちゃったねぇ。でも、それは仕方のないことなんだよ、はらちゃん。違う世界を知るってことはさ、素敵なことだけど、つらいことなんだよ。」
ユキ姉は「素敵なこと」と「つらいこと」のどちらも知っている。「つらいこと」がどんな出来事だったのか、それはこれから語られるのでしょう。
(第6話予告)
ユキ姉 「あきらめたほうがいいと思うよ、神様との恋は。深入りすると殺されるよ。」
第6話の予告でこんな不気味なことを言っています。ユキ姉の決め台詞は「殺すしかないね」ですが、過去においてユキ姉は「神様に殺された」存在なのかもしれません。
(第1話)
ユキ姉 「イヤな世界だねぇ。みんなが自分がいちばん可哀想だって言ってさぁ。こう見えてねぇ、わたしだっていろいろあるわよ! たまには、わたしだって前向きなことが言いたいわよ!」
ユキ姉の決めゼリフは「殺すしかないね」ですが、これが矢東薫子の原作から言っていたセリフなのか、それとも、越前さんの創作なのか、それはわかりません。でも、その過去においてユキ姉は神様に「殺された」ことがあるとすれば皮肉な話ではあります。
【玉田工場長】
第5回で突然に亡くなってしまった玉田工場長。第4回までは矢口さんに甘い、単なる管理職として描かれていたのですが、ここに来てその存在は物語の重要な存在となってきました。
まず、マンガの世界に移った玉田工場長は名前も「玉ちゃん」になったわけですが、現実の世界の記憶を持っていないとのこと。これがどういう意味を持つのか、まだわかりません。ただ、あれだけ慕っていた矢口さんのことも忘れてしまっているわけですね。なので、マンガの世界から再び現実の世界に出て来て、軽く幽霊騒ぎなどを起こしつつ、矢口さんと再会するというくだりがあるのかもしれません。もちろん、そのとき、玉ちゃんは矢口さんのことをはっきりと覚えてはいないわけで、かなり切ない話になりそうな気がします。
ただ、謎もまだ残されています。第5回で玉田工場長はこんなことを言っていました。
(第5話)
玉田工場長 「どうした、はらちゃん? 越前さんとケンカでもしたか?」
はらちゃん 「ん? ケンカとは?」
玉田工場長 「また、それかよ。ケンカってはアレだよ、ほら、田中、教えてやれ。」
田中さん 「あ、はい。お互いの意見が合わなくて、言い争いになってしまうというか。」
はらちゃん 「あ、はい。ありました。越前さんがわたしの言うことをなかなか信じてくれなくて。」
玉田工場長 「あきらめることだな。男と女のケンカの場合、男があきらめる以外、解決はないんだよ。それからこれだけは覚えとけ。」
はらちゃん 「はい、はい。」
玉田工場長 「女が男を信じるということは、決してない!」
はらちゃん 「えぇー? そうなんですか?」
玉田工場長 「そうだ、絶対ないんだ!」
田中さん 「何があったんですか、工場長?」
玉田工場長 「ないんだよ! ないんだよ!」
はらちゃん 「それは困りますね。」
玉田工場長 「その通りだよ! 困ったもんだよ!」
過去に何があったか、それは説明されていませんが、極度の女性不信です。しかし、なぜ、矢口さんにだけは甘かったのか。バレンタインデーのくだりでもこう言っています。
(第4話)
矢口さん 「どうなったんだろう。。」
玉田工場長 「え? なにがですか?」
矢口さん 「何でもありません、あ、はい、これ。」
玉田工場長 「え? チョコですか?」
矢口さん 「なーに言ってるんですか、工場長。バレンタインはかまぼこでしょ?」
矢口さんからのチョコは期待していたはず。このあと、矢口さんを追いかけて何か「女性不信」になることでもあったのか・・・と考えてみたのですが、それにしては演出がおおげさなので、ちょっとそれはないのかなと思っています。ということで、今のところ、女性不信の玉田工場長が矢口さんにだけ甘かったのか、まったくわかりません。
そして、第5回では玉田工場長が天涯孤独の身であったことも明かされています。
(第5話)
玉田工場長 「おまえ、家族は?」
はらちゃん 「家族?」
玉田工場長 「親とか兄弟とか、いないのか?」
はらちゃん 「わかりません。」
玉田工場長 「あぁ、そうか、わかんないのか、いるのか、いないのか、、オレと一緒だな。オレと一緒だよ。親も兄弟もいたのか、いねえのか、わかんねえ。まぁ、親はいたんだろうけどな、わかんねえんだ。で、結局、家族も持たなくてさぁ、ひとりだよ。フッ、ひとりだよ。ひとりっきり。」
(第5話)
玉田工場長 「ときどき思うよ。オレが死んでも泣いてくれる人はいるのかなぁ、ってな。」
はらちゃん 「死ぬって、世界からいなくなることですよね?」
玉田工場長 「んー。」
はらちゃん 「工場長がいなくなったら寂しいです。わたしが泣きます!」
玉田工場長 「嬉しいこと言ってくれるねぇ、ありがとよ。」
天涯孤独の身だった玉田工場長はマンガ世界で新たな仲間を得たわけですが、まだこれだけでは少し足りない気がします。より救いのある展開になるとすれば、それはマンガ世界で誰かと結ばれることではないか。そして、マンガ世界にいる女性はただ一人、ユキ姉です。そして、ユキ姉も第5回でこんなことを言っています。
(第5話)
ユキ姉 「ハァ~、、なんでさー、みんな、外の世界に行くと恋するわけぇ? ここにも女がひとりいるんだけどなぁ? なぁ?」
はらちゃん・マキヒロ 「はぁ・・・。」
ユキ姉 「なんなの・・・!」
ユキ姉もまた恋について話しています。こういった発言をしたのはこの第5回が初めてです。物語の後半においてユキ姉の過去が語られるのは間違いないと思うのですが、おそらく、壮絶なものなのでしょう。でも、そのままではユキ姉にも救いがありません。となると、玉ちゃんとユキ姉が結ばれるというカタチになるのではないか。玉田工場長は玉ちゃんとなって現実世界の記憶を持っていませんから、あの女性不信も一緒に消え去っているはず。
そして、エンディングのクレジットは第1回から「光石研 奥貫薫」となっています。わたしはこの二人がマンガ世界で結ばれて終わってほしいなと思っています。というか、そうしないとこの二人の落としどころがないような気がするのですよね。
おわり